すみまよ日記

日々感じたことや読んだ本の感想など

『HSPブームの功罪を問う』の感想

巷でよく見かけるHSPや繊細さん関連の本や記事とは、一味違ったタイトルに惹かれて購入。本書には、HSPの問題のある取り上げ方として、いくつか実例が挙げられているが、なかでも個人的に悪質だと思ったのが、HSP医療ビジネスだった。
 

HSPは本来、医師による検査や診療の対象にはならないはずなのに、一部の精神科クリニックでは保険のきかない自由診療で、HSPの検査や診断が行われているそうなのだ。著者のもとには、生きづらさを解消したいと藁をもつかむような思いで受診したが、高額な治療費を請求され、何の改善も見られなかったという被害にあった方々の声が届いているという。

 

他にも問題のあるものとして、カウンセラーとして人の心を扱うのに必要な専門性の疑わしい講座が開講されていたり、その講座で得た資格でカウンセリングが行われているといったHSP資格ビジネスや、HSPに関心を寄せる人たちが集う交流会に、カルト団体やマルチ商法が参入していることなどが取り上げられていた。

 

自分がHSPだと自覚することで生きづらさから解放されるのだとしたら、それはそれでいいことだと思う。けれど、本書で著者が論じている「罪」の面は決して忘れずにいたい。

 

 

 

【内容紹介】

HSP(敏感すぎる人)という言葉は,人々の生きづらさを巧みに表したことで共感をよび,広く使われている.だが,本来は心理的特性を表す考え方が独り歩きし,医療やカウンセリング,資格ビジネスやマルチ商法まで,問題のある理解や取り上げ方も多い.気鋭の心理学者が「HSPブーム」の実態を明らかにする.