すみまよ日記

日々感じたことや読んだ本の感想など

『私だけの水槽』の感想

自分がうまく言葉にできなかった思いを、だれかが言葉にしてくれているのを読むとうれしくなる。

その人の弱みが自分と似ていて、似たようなことで悩んでいるとさらに親しみを持ち、またその人の書いたものが読みたくなる。

松井玲奈さんの『私だけの水槽』もそんなエッセイだった。

 

松井さんが幼なじみに、人とうまく会話ができないことを相談すると「それは相手に興味がないからだ」と指摘される場面がある。

 

意味が分からず困惑している松井さんに、幼なじみは「昔から興味のない話題には無理に入ってこなかったこと」「好きなものが合う人とはたくさん話せていること」「話せないのは単純にその話題に興味がないからではないか」と説明する。

 

幼なじみからの指摘に「それってめちゃくちゃ性格悪いじゃん」と落ち込んでしまう松井さん。「確かに」と認めてゲラゲラ笑う幼なじみ。

ああこれ私もそうだわ。自分が直接言われたわけでもないのに「確かに」に胸をえぐられる。

顔が熱くなっていたたまれない様子の松井さんに、思わず自分を重ねてしまう。

 

会話をすることが嫌なのではない。本当は興味を持ちたい。けれど、どうやって興味を持てば良いのかがわからないのだ。相手の話に前のめりになれない自分が嫌になる。話すたびに反省をし、自分の心を動かせる会話の糸口はどこだと血眼になって探している。そういう部分が、根本的に人と付き合うことに向いていない。

 

そう、それ!興味を持てるものなら持ちたいけれど、どうやって興味を持てばいいのかわからんのよね。

私は松井さんの幼なじみに聞いてみたくなる。なぜそんなに誰にでも何にでも興味が持てるのか。どうやって興味を持つのか。けれど本書にその答えはない。

限定的な物事にしか興味が持てないのを認めつつ、だからこそ生まれる自分らしさがあるはず、そう思える松井さんが私は好きだ。

 

 

 

【内容紹介】

 

<自由に泳ぎ回れるその中で、 誰にも関与されず一人の時間を心ゆくまで楽しむ。好きな時に、好きなことを>

ストローでジュースを上手く吸い込めなくても、歌が苦手でも、自分に敬意を払って、日々を過ごす。苦手なことも好きなことも、ありのままを書き綴る最新エッセイ集!